国の文化審議会は3月18日、三重県名張市新田にある茅ぶき屋根が特徴の「住川家住宅主屋」を国の登録有形文化財(建造物)に新たに登録するよう文部科学大臣に答申した。登録されると、市内の国の登録有形文化財(建造物)は計32件、旧市街地以外では初となる。
新田地区は、江戸初期の新田開発で開拓された。住川家は初瀬街道新田宿の南端近く位置し、街道に面して建つ。住人の住川加見子さん(70)は「祖先は新田開発の初期に、この場所に住み始めたと伝え聞いている」と話す。
住宅主屋は、建て方の特徴などから明治時代中期には建てられていたとみられ、江戸時代の特徴も残す。入母屋造茅ぶき屋根の下に、瓦ぶきの下屋根が四方に付いており、建築面積は約100平方メートル。街道側から向かって右側は格子戸が並び、左側の玄関を入ると土間が広がる。天井には、竹で組まれた高い小屋組みが見える。
屋根の茅は30年ほど前に大掛かりなふき替えが行われ、3年半ほど前に一部をふき替えている。新田宿に茅ぶき屋根の家は他にもあるが、上からトタンで覆っており、茅だけの屋根は住川家のみだという。
調査を担当した県文化財保護指導委員の岩見勝由さんは「建築当初の形がよく保存されている貴重な建物。初瀬街道の宿場町の趣を今に伝えている」と評価。住川さんは「うちは立派なお屋敷と違い、庶民的な農家。そんな普通の暮らしを伝える文化財があってもいいのかなと思う」と話していた。
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