【渓谷内のコースを進む梶谷さん(中央)と、法螺貝の音色を響かせる修験者(左)ら=名張市赤目町長坂で】
新型コロナウイルスの影響で1年延期となっていた東京五輪聖火リレー。三重県内2日目の4月8日、伊賀市で伊賀上野城や中心市街地の銀座通り、名張市で赤目四十八滝渓谷などランナーが駆け抜けた。
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伊賀市の区間は、伊賀上野城から市役所までの5・1キロを、歌手の鳥羽一郎さん(68)から、伊賀流忍者博物館(上野丸之内)で忍者ショーなどを行う「伊賀忍者特殊軍団 阿修羅」のメンバーで公募ランナーの渡邉未央さん(33)まで25人が炎をつないだ。
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同城のある上野公園や銀座通り周辺には、カメラやスマートフォンなどを手にした市民らが集まり、ランナーや聖火のトーチなどを撮影していた。県立上野高校(上野丸之内)前では、地元在住の宮田英樹さん(49)から北川丈博さん(50)に聖火が引き継がれ、2人は沿道の人たちに手を振りながら、笑顔で走者を務めていた。
名張市の区間は、赤目四十八滝の不動滝から赤目四十八滝キャンプ場までの1・6キロを11人でつないだ。渓谷入口で店を営み、周辺の美化活動を続けてきた公募ランナーの梶谷穣さん(87)が不動滝前にかかる橋の上からスタート。同市の盛り上げ策で、渓谷と関わりの深い修験道の行者が奈良の金峯山寺から駆け付け、法螺貝の音色を響かせた。梶谷さんはトーチを手に、一歩一歩ゆっくりと遊歩道の階段を下り、霊蛇滝前の広場で次のランナーに炎をつないだ。
梶谷さんは聖火ランナーに決まってから、名古屋市に住む孫の圭悟君(11)の野球バットをトーチに見立てて練習を重ねてきた。この日、渓谷内の観覧エリアで雄姿を見守った圭悟君は「すごくかっこ良かった。『がんばったね』と声を掛けたい」と話していた。大役を果たした梶谷さんは「本当に重みのある火だと感じながら、感謝の気持ちを込めて進んだ。無事に次の方につなぐことができ、ほっとした」と振り返った。
同区間では、名張市で700年以上続く伝統行事「松明調進」の紹介で地元住民の「伊賀一ノ井松明講」の講員ら約40人が行列を組んで歩いたり、市立赤目中吹奏楽部による出迎え演奏があったりと、関連行事も催された。
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