【修復を終え本堂に設置された鳳凰彫刻=伊賀市古郡の常福寺で】

 藤堂藩お抱えの彫刻師で、根付などの作品で知られる田中岷江の作と伝わる、三重県伊賀市古郡の常福寺の鳳凰彫刻(市文化財)が3月19日、修復を終え約3年ぶりに同寺へ戻された。江戸時代後期の1808年に造られたクスの寄木造りで、寺院関係者や地元住民らが、両翼を広げた雄大な像の帰還を見守った。

 同寺や市文化財課によると、本堂入り口の向拝部にあり、木鼻や蟇股(かえるまた)とともに文化財となっている鳳凰彫刻の大きさは、全長約1・5メートル、両翼1・2メートル。元々は極彩色だったとみられるが、紫外線や風雨、虫食いによる劣化が年々進み、修復のため2018年から搬出されていた。

堂内で修復の仕上げをする横川さん

 修復を担当した愛知仏像修復工房(愛知県尾張旭市)の横川耕介さん(57)によれば、劣化によって不足している強度を戻すため、専用の樹脂を全体に含浸させ、欠損部分は古い接着剤を剥がした後、古色に塗った木を、にかわや漆の接着剤で取り付けた。虫食い箇所は漆でできたパテで埋め、脱落・欠損していた目も修復した。主に根付を作っていたという作者の心情に思いをはせた横川さんは「楽しんで作っていたのでは、と思わせる作品」と話す。

 修復を終えた鳳凰彫刻は、新たな劣化を防ぐためもあり、本堂内の天井に設置された。織田杲深住職(79)は「地元ゆかりの彫刻師の作で、文化財であり、寺のシンボル。傷んでいたので、元の姿になって良かった。せっかくなので、保存かたがた堂内に置かせて頂く」と話した。

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