身近な地域を記者が実際に歩いて巡る「てくてく歩記」。今回は、伊賀地域の西隣、梅の名所として知られる奈良市月ヶ瀬地区の約8キロを歩きました。梅渓が見頃を迎える2月中旬から3月末までは「梅まつり」も開かれています。(取材・山岡博輝)
まだ朝晩の冷え込みが厳しい2月初旬、梅まつりを控えた月ヶ瀬を訪ねました。中心部・尾山にある行政センター(旧村役場)前を午前9時すぎに出発し、まずは付近の梅渓へ開花状況を確かめに行こうと急な坂を上ると、たくさんの花を付けた紅梅が迎えてくれました。あと半月からひと月で、頭上いっぱいに梅が咲き誇っていることでしょう。
眼下に名張川を一望できる通称「一目八景」の周辺には、土産店や茶店などが集まり、「盆梅」「月瀬漬」などの看板が目に入ります。斜面の急な階段を上り、真福寺へ。時季になれば、しだれ梅が楽しめるそうです。
梅渓を後にし、周囲に茶畑も広がる道を下っていき、観光・体験施設「ロマントピア月ヶ瀬」へ。持っていた地図には、その近くに「摩崖仏」とあり、県道に出て探してみると、苔むした岩陰に刻まれた高さ30センチほどの摩崖仏に出会いました。
県道を西へ歩いていくと、今度は「堀出地蔵」というほこらがあり、中には高さ1・5メートルほどの岩に掘られたお地蔵さんがいました。辻に古い石灯籠がある長引の集落から坂を下っていくと、「今日はまだ、平らな道をほとんど歩いていない」ことに気付きましたが、幸い、心地良く汗が流れています。
対岸の月瀬集落を遠望し、下り坂の途中から「もみじの小路」という遊歩道へ。風と沢の音だけが聞こえるヒノキ林の中を下っていきます。ふと、樹上の鳥が落下するような勢いで飛び立ち、記者を驚かせました。左手は高山ダム上流部の名張川、右手は崖という景色がしばらく続き、行く先に赤い吊り橋(八幡橋)と桃香野の集落が見えてきました。
すっかり赤さが無くなったカラスウリの実や、車道に合流する辺りにあった茶畑を眺めていると、八幡橋のたもとへ。湖面越しに、桃香野集落が大きな浮島のように見えました。県道を西へ進み、再び大きな石灯籠が出てくると、「龍王の滝」の看板が。遊歩道を2分ほど歩いたところにあった滝は、雨の後だからか水量が多く、やや濁っていました。
ここからは、桃香野集落の中を通るつづら折りの道を少しずつ上ります。中腹にある善法寺で小休憩すると、八幡橋と、更に東にある月瀬橋の2本を一望できました。上りなので目線が足元に行くからでしょうか、マンホールのふたが梅のデザインになっていることにここで気付きました。
多数の仏像が刻まれた「千体摩崖仏」を過ぎてもひたすら上り続け、地図では城跡とされている場所まで来ましたが、周囲は民家と茶畑のみで、城跡を示すものは見当たりません。集落を抜けると、忘れたころに梅の花が。梅の郷・月ヶ瀬は、至る所で梅が出迎えてくれることを改めて実感しました。今年も月ヶ瀬の梅は、元気に咲き始めています。
出発から2時間45分、正午ごろに今回の目的地・桃香野口バス停へ到着。歩数計は1万1788歩でした。
三重交通バスは上野市駅からの路線の終点がここで、JR奈良駅方面へは奈良交通バスも通じています。20分ほど待つとバスが到着し、乗り込むと車内の暖かさが体に染みました。