コンベヤーなど搬送に使われるベアリングや各種部品を生産し、今年創業81年を迎えた株式会社富士製作所(伊賀市炊村)が開発した搬送車用の車輪「フジニンジャホイール」がこのほど、2020年度グッドデザイン賞の「ベスト100」に選出され、更に「グッドフォーカス賞(技術・伝承デザイン)」を受賞した。【受賞商品を紹介する(左から)中平課長、村上社長、高井部長】

 グッドデザイン賞は国内外の多くの企業や団体が参加する世界的なデザイン賞で、シンボルとなる「Gマーク」は優れたデザインの象徴となっている。グッドフォーカス賞は4部門あり、技術・伝承デザインは中小企業からの受賞商品の中で、特に高度な技術や技能によって実現されたとして認められた中小企業庁長官賞だ。

 フジニンジャホイールは、縦、横、斜めなど“忍者”のように身軽でスムーズに移動できる全方向駆動型車輪。外周部に半樽型のローラーを幾何学模様に配置。各車輪にモーターを取り付け、遠隔操作でプログラム通りのトレース走行が無人で行えるという。工場や倉庫などの搬送現場の自動・無人化に対応できる画期的な商品として今年1月に製作され、今後が期待される。

搬送車に装着したフジニンジャホイール(富士製作所提供)

 同社の村上吉秀社長(55)は「外径が150ミリの小型で、1個当たりの耐荷重が300キロの能力を持つのは、おそらく世界で唯一だと自負している」と話す。この車輪を4個使えば、1トンの重量物を移動できるわけだ。

 商品を企画・開発した開発設計部の高井昭義部長(52)は「耐荷重を大きくしようとすれば車輪の外径も大きくなるのが当たり前。お客さまの要望に応えて、小サイズながら大きな耐荷重を確保するために、独自の構造を考えた。現在、特許申請中」と話す。

「働きがいのある企業」大賞も

 半樽型のローラーを中央部で分割し、軸をずらすという斬新な発想で、耐荷重を高めながら滑らかな回転が得られるようになった。無駄のない美しいデザインと相まって、賞の審査員から高く評価された。

 営業部の中平篤志課長(36)は「世の中にない新しい商品を提案できることが、営業マンとして一番のやりがい。発売以来市場の評価も高く、自動車、医療、介護など新しい業界からの引き合いも多い。将来性がますます楽しみ」と期待を示す。

 同社は現在、従業員が88人、年商は15億円。17年に現在地に新工場を建設し、従来の工場より敷地面積を5倍、工場棟面積を2倍に拡大した。技術志向の同社では、管理・間接部門も含め、全ての社員が品質管理検定3級以上を取得している。「営業であろうが総務であろうが、品質用語や改善方法を全員が習得している。そのことがお客さまから信頼と指名を得られることにつながる」と村上社長。

 また役職者にはビジネスマネジャー検定の取得を推奨。若い人が将来、管理職になるために何が必要かを「視(み)える化」し、目指すべき将来像を明確にしている。更に成果を出した社員を積極的に抜擢するなど、「若手のがんばれる会社」を掲げており、こうした取り組みに対して今年9月、大阪府経営合理化協会から「働きがいのある企業」大賞を受賞した。

 村上社長は「働きがいと技術力をベースに生まれた商品を、自信をもって世の中に訴えていけば、必ず世の中から認知されると思う。今はまだ珍しい存在のニンジャホイールだが、近い将来、暮らしを豊かに便利にする商品として、当り前に使用される“文明品”になると確信している」と話している。

2020年12月12日付785号21面から

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