12月に開かれるDJの世界大会「IDA WORLD」(本部・ポーランド)のショー部門に、名張市の小学6年生、SORA(本名・小林空)さん(12)=右=と母親のREIKO(本名・令子)さんのチーム「RuShfunk(ラッシュファンク)」が出場する。親子での挑戦は異例で、息の合った演奏を武器に頂点を目指す。
娘「一緒に目指そう」
SORAさんは両親ともDJという家庭に生まれ、レコード盤や専用機器に囲まれて育ったが、4歳から習い始めたダンスに打ち込んでいたため、DJへの関心は高くなかったという。
転機は2年前の夏。DJ歴25年のベテランで「女性最強ターンテーブリスト」とも称される母が国内大会の最終ステージに勝ち進み、応援した際、居並ぶ男性陣に混じって堂々の演技で会場を沸かせる姿を目にし、「お母さんって、こんなにすごい人なんだ」と初めて憧れを抱いた。
母は2か月後の「IDA JAPAN」で優勝し、日本人女性として初めて世界への挑戦権を獲得。12月、会場となるポーランドへ旅立つ姿を見送りながら「DJをやりたい」という感情が沸き上がったという。
世界大会では成績を残せず悔しさを胸に帰国した母を空港で出迎えたSORAさんは、帰途の車内で「お母さん、私もDJやるよ。一緒に世界目指そう」と宣言。以来母の指導を受け、学校から帰宅すると毎日数時間の練習を黙々と重ねた。
「DJで世界一になるまでダンスはやめる」と教室の恩師にも伝えた。有名DJのテクニックを動画で研究し、こつをつかんでは自分のものにしていった。REIKOさんは「私が4、5年かけて身に着けたことを1年で覚えてしまう。すごい吸収力だ」と目を丸くする。
楽しさを表現
今年10月、世界への出場権をかけた国内大会「IDA JAPAN」に親子でエントリー。コンビ名はSORAさんが名付け、2人の名前の頭文字を大文字にした。今年はコロナ禍で動画審査となり、日々の練習を重ねる自宅一室で応募用の映像を収録した。
ショー部門は、ギターなど別の楽器を採り入れることも許され、高い自由度の中で表現力を競う。母娘は2つのターンテーブルを2人で分担して同時に操作するテクニックを中心に、足を上げたり回転したりと体全体を使う技も採り入れて、約6分間の作品を大会本部に送った。
10月25日に審査結果が発表され、全国から歴戦の強者たちが参加する中で優勝。審査員からは「2人の息がピッタリ合っていてすごい」「楽しさをよく表現できている」といった評価が寄せられた。
世界大会は12月12日。国内大会同様オンラインでの開催で、十数か国からの参加があるとみられている。2人は「親子ならではの演奏で、今度こそ世界一を取る」と意気込む。
「IDA JAPAN」での2人の動画は大会ホームページ(http://idajapan.org/)で視聴できる。
2020年11月7日付783号1面から