日本語指導が必要な外国籍の子どもを支援するため、三重県教育委員会は今年度からオンラインで日本語の授業を実施する取り組みを始めた。名張市が最初の対象に選ばれ、市立名張中学校(丸之内)で9月下旬から開始している。【オンラインでの日本語授業の様子=名張市丸之内で(10月16日撮影)】
NPO法人青少年自立援助センター(東京都)が運営する「NICO PROJECT」が県教委の委託を受けており、ウェブ会議システム「Zoom」を通じ、専門の日本語講師が双方向型の授業を複数人同時に行う。
日本語授業を受けているのは、同中で唯一の外国籍の生徒、フィリピン国籍で3年のヨシロー・サムビレ・フルカワ君(14)。祖父が日本人で、日本で働く両親と一緒に暮らすため2018年に故郷のミンダナオ島を離れて来日した。少数言語のビサイヤ語が母語で、タガログ語や英語も話せるが、日本語がなかなか理解できず習得に苦戦。同中では、一部の教科を別室で個別指導する方法をとってカバーしてきた。
フルカワ君が受講するのは初めて日本語を学ぶ人向けのコースで、1コマ50分を1日5回、10月23日まで20日間の日程で進めている。受講メンバーは他に7人おり、フランスやネパールなどさまざまな国の人だという。
フルカワ君は「同じような状況の仲間と、一緒に勉強できて楽しい。日本語がだんだんわかってきたと思う」と話していた。日本の人気アニメ「ドラえもん」が大好きで、絵を描くのが得意。将来はイラストレーターになるのが夢だという。
県教委によると、県内の公立小中学校には日本語で通常の授業を受けるのが困難な児童生徒が2147人(5月1日現在)いる。在籍率は1・44%と全国で最も高く、使用言語は27言語と多岐にわたっている。県教委は日本語を教える巡回相談員を市町の要請に応じて派遣しているが、外国籍の児童生徒数が少ない地域では、日本語を学ぶ環境に格差があった。今回の取り組みは、都道府県教委としては全国初の試みだという。