伊賀市東条の府中小学校(藪中俊典校長)で、保護者と教職員で組織する「親師会」(PTA)から寄贈された自動翻訳機が活躍している。学校を取り巻く「言葉の壁」を乗り越えるための一つの手段として、注目されつつある。【寄贈した自動翻訳機を手にする森喜会長(右)と藪中校長=伊賀市東条で】

 同小は佐那具町、千歳など府中地区の児童200人が通う中規模校。うち外国にルーツがある児童が全体の13%に当たる26人(ブラジル24人、ペルー2人)。これは上野西、上野東に次いで3番目の多さで、児童数に占める割合は最も高い。

 そのうち22人は日本生まれで、友だちとの会話に不自由はないというが、各家庭では親とポルトガル語やスペイン語で会話している児童がほとんど。藪中校長は「授業の学習言語を理解したり、自分の考えを発表したり、文章に表したりすることには難しさを感じている」と話す。

 こうしたなか、親師会が「子どもたちの学習や保護者との意思疎通に役立ててほしい」と、今年3月、自動翻訳機2台を学校に寄贈した。前会長の西口博隆さん(54)は伊賀消防署に勤務しており、日頃、外国人の急病人の救急搬送時、スマートフォンの翻訳機能を使っている経験から、より変換速度が速く機能に優れている自動翻訳機の導入を思いつき、会の賛同を得て購入したという。

自動翻訳機を使って学習する児童(左)(提供写真)

家庭訪問やパトロールにも

 自動翻訳機は、互いに相手の言葉を話せない人同士が自国語で話すと、即座に翻訳したい言語に音声と文字で表示できるもので、ポケットサイズながら賟鋮数か国の言語に対応できる。

 新型コロナウイルス感染拡大防止の自粛期間が終わり、学校が再開されてからは、外国にルーツがある児童の家庭を訪問する際に担任が持参し、保護者と1台ずつ持ち会話することで意思疎通を図っている。

 「微妙なニュアンスや長文もしっかり伝えられるので、担任も本当に助かっている」と藪中校長。普段の授業でも使われており、児童の学習の理解に役立てている。

 4月から同会会長になった森喜康之さん(42)は「毎週1回の防犯パトロールでは、今まで外国籍の保護者の方と同じ車に乗り合わせると会話ができず、ずっと無言の状態だったが、これからは解消されそう。今後、ベトナムや中国などの児童も増えると思うので、今回の使用効果が高ければ台数を増やす方向で取り組みたい」と話す。

 伊賀市教育委員会では「伊賀市では外国籍の児童が年々増えている一方、通訳できるスタッフが少ないのが現状で、今回の取り組みは非常にありがたい。児童や保護者とのコミュニケーションをタイムリーに図れる自動翻訳機は欲しいアイテムの一つ」と話している。

2020年7月11日付775号1面から

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