伊賀地域など東海地方を中心に未曾有の被害が出た「伊勢湾台風」から今年9月で60年が経過する。土砂がうず高く重なった道路、崩落した新町橋、後始末に追われる人たちなど、台風通過翌日の自宅付近を撮影していた名張市新町の松田賢治さん(79)が、9月3日(火)から12日(木)まで写真展を開く。【当時撮影したカメラを手に写真を紹介する松田さん(左写真)、伊勢湾台風翌朝の新町のメイン通り(右写真=松田さん提供)】
台風が伊賀地域に最接近した1959年9月26日、当時19歳の松田さんは宿直のため大阪市内の勤務先にいた。「これだけの台風。名張はどうなっているのか」。不安な一夜が明け、名張駅から母と祖母が待つ自宅に歩いて向かうと、北隣の本町の中ほどから様相が変わった。名張川の水が市街地へ押し寄せ、家々は床上1㍍くらいまで水没したという。
自宅や町内の片付けに追われながらも、数か月前に買ったばかりのカメラで近所を撮影した。名張川にかかる新町橋は、上流にあった鍛冶町橋が流された影響で堆積物が増え、中央部が崩落。そこから土砂を川に捨てる人たち、水の引いた川原で家財道具の整理に追われる人たち、自衛隊員や応援に来た学生などの姿も捉えていた。
「あの日・あの時・今は!」と題した今回の写真展には、当時と現在の同じ場所のカットを並べた20組ほどを展示予定。10年ほど前、新町のあゆみをまとめた冊子に使った数枚以外は初めて人の目に触れる写真がほとんどで、松田さんは「あの台風で名張のまちがどんな打撃を受け、その後どう変わってきたかを見てほしい。災害に備えられることを考えるきっかけにもなれば」と思いを語った。
写真展は同市新町の「やなせ宿」中蔵で午前9時から午後5時(初日は午前10時から、最終日は午後3時)まで。入場無料。月曜休館。
問い合わせは松田さん(0595・63・2278)まで。
2019年8月24日付 754号 3面から