「忍者は一生のテーマ」。三重大学国際忍者研究センター(伊賀市上野丸之内)の研究員で、同市服部町に住むロシア人のクバーソフ・フョードルさん(32)。今春、1年半の研究員生活を終え、ロシアに戻る予定だというフョードルさんに話を聞いた。【伊賀や忍者への思いを語るフョードルさん=伊賀市上野丸之内で】

 フョードルさんは、ロシア西部のサンクトペテルブルク出身。幼いころ、電車にはねられたことがあり、「普通とは違う人生の始まり」と振り返る。

 幼稚園で流行していたアニメ「忍者タートルズ」が、忍者との出会い。小学生のころは親の古着を利用し、自作の黒装束で遊んだ。

 「忍者は超人的スパイ」と胸を熱くし、中学に入るころには忍者の専門書を愛読した。高校生のころには、ロシアにある古武術道場の門をたたいた。

 サンクトペテルブルク大学で日本語と日本史を学んだ後、「忍者の古里・伊賀まで自転車で行ける」と考え、三重大学(津市)の留学生として2007年に初来日した。

 大学では文献に基づいて考えるようになり、イメージとのギャップを感じたことも。研究しようにも思うように史料がそろわず、山伏を切り口に忍者に迫ろうと試みた。

 2年間の留学後は帰国し、ロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所で、日本の南北朝時代の歴史書「梅松論」の研究に励んだ。

「海外へ魅力発信したい」

 12年、忍者の学術的研究が始まった三重大へ、2度目の留学。「絶好のタイミングだった」といい、山田雄司教授に従って伊賀を訪れる機会が増え、自身も住民との交流を深めて情報を得ようと、忍者サークルなどの活動に参加した。

 2年間の留学期間を終えて帰国。同研究所の仕事や通訳の仕事などをしていたところ、国際忍者研究センターを新設する三重大からの誘いがあり、17年10月、研究員として3度目の来日を果たした。

 伊賀市の研究室に配属され、「忍術と修験道」をテーマに、伊賀の郷士が著した忍術書「万川集海」など資料や文献を読んだり、甲賀市などへ調査に出向いたりと、研究の日々を送った。

 フョードルさんにとって伊賀は、子どものころから憧れていた忍者の古里。「訪れていない史跡もあり、まだ未練がある」という一方で、「今後は知識や経験を生かし、海外に向けて忍者の魅力を発信していきたい」と話す。

 既に米国で武術道場の経営をする友人から協力を求められており、「その事業に忍者的要素を加えたら、より面白くなるのでは」と考えているそうだ。「ゆくゆくは伊賀に観光客を連れ来るような役割を果たせれば」と夢を膨らませる。

2019年2月23日付742号7面から

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