なでしこリーグ1部に1年で返り咲いた女子サッカー・伊賀FCくノ一。攻守それぞれのキーマンとして2部優勝を支えた、移籍加入選手のチャレンジを振り返る。〈第3回〉
切れのある即戦力アタッカー
2部のスフィーダ世田谷FCで2013年に得点王を獲得、7年間で通算67得点を記録した森仁美選手(27)にとって初めての移籍だった。相談に乗ったS世田谷でもチームメートの下條彩選手(26)は「大事な場面でゴールを決めてくれる」と、再び一緒にプレーすることを歓迎、加入を後押しした。【タッチライン際で球をコントロールする森選手=伊賀市で】
ポジションは「シャドー」と呼ぶ攻撃の2列目。即戦力のアタッカーを求めていたくノ一でリーグ全18試合に先発、ゴール前の密集地に切れ込むドリブルなどで好機を作った。今季6得点はチーム2位で、カップ戦と国体の決勝、2部リーグ優勝を決めた本拠地戦でもゴールを飾った。
「すぐ溶け込めたし、縦に速いサッカースタイルが自分に合っていた」。優勝経験はこれまで1度もなかったが、伊賀1年目で3つのタイトルを勝ち取った。来季戦う1部の舞台は初めてで、どこまで通用するのか今から楽しみにしている。
愛着ある古巣 プレーに変化
「最初の入団は20歳のとき。当時は先輩に頼っていたが、今は年齢や立場が違う」。乃一綾選手(28)は3年ぶりに伊賀へ戻り、守備的中盤の「アンカー」としてリーグ全試合にフル出場した。敵陣深い位置で球を奪おうと前に出る味方フォワードと、ディフェンスラインの間にできるエリアを突かれないよう体を張ってチーム全体のリスク管理に徹した。【ヘディングで相手FWと競り合う乃一選手(右)】
くノ一を離れ、新天地に選んだ岡山湯郷ベルでは1年目の2016年に2部降格を味わった。6年在籍した愛着ある古巣も昨年、最下位になって1部から転落。仲が良かった主将の杉田亜未選手(26)らの苦しく悔しい胸の内を知り、再び声を掛けてくれたくノ一での心機一転を決めた。
元は攻撃的ポジションだが、この1年は黒子役として周りを生かした。プレーの変化は杉田主将にも伝わっていた。「今年は勝つための確実なプレーや若手とのコミュニケーションに積極的だった」。乃一選手は「戻ってきてチームワークの重要性を改めて感じた。1部で戦うためもっとレベルを上げないと」と来季を見据える。