「高貴」を象徴する色といえば「紫」を連想する人は内外問わず多い。巻貝から取り出した色素を使い、糸や生地を鮮やかに染める「貝紫染め」に魅せられた、伊賀市小田町の染糸業、稲岡良彦さん(62)による「貝紫染展」が、7月29日まで伊賀市上野福居町のアートスペースいがで開かれている。【紫色に染めた糸を手に来場を呼び掛ける稲岡さん=伊賀市小田町で】
巻貝の一種「アカニシ」などにある細長い腺(パープル腺)を取り出してつぶし、還元剤を加えて加熱。緑色になった液に糸を浸し、絞って空気に触れさせると酸化が始まり、つややかな紫色に変化する。紫根染めなどの植物性原料に比べて耐久性に優れ、発色も鮮やかだが、原料の十分な確保が大変なため希少価値が高く、かつてはクレオパトラが愛したことでも知られる。
くみひもに使う糸の染色を生業とする稲岡さんは18年ほど前、「現代の名工」が作った貝紫染めをテレビで知り、衝撃を受けた。最初の1、2年は青い色にしかならなかったが、仕事の合間を縫って根気強く取り組んできた。時間と手間のかかる地道な作業だが、「緑から紫に変わる瞬間は感動を覚える」ほどだ。
今回は、稲岡さんが提供した糸を使って作家が仕立てた着物を始め、帯や小物、コサージュ、アクセサリーなど十数点を展示予定。「海で獲れる巻貝を使った、こんな美しい染色が伊賀にあることを知ってほしい」と話している。
時間は各日午前11時から午後6時。入場無料。22日午後2時からは、貝紫染の実演見学会を予定している。参加費2000円、定員10人(先着順)。
問い合わせは、アートスペースいが(0595・22・0522)へ。
2018年7月14日付727号2面から
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