前回の掲載(610号)から約3か月半経過してしまいました。今回は、伊賀市中心部から奈良・月ヶ瀬までの約12kmを紹介します。(取材・山岡博輝)【1枚目の写真 法花から岡八幡宮への道中の風景】
今回のコースは、記者も十数年前に経験した、県立上野高校(伊賀市上野丸之内)の伝統行事「月ヶ瀬マラソン」に近いルートを選択しました。
【国道から木興町で西に折れ、うろこ雲が広がる空の下を進む】
秋晴れに恵まれた10月31日午前9時半、同高前を出発。暑くなく寒くもない、しかも少し風があるという、歩くには絶好の条件です。西大手で南に折れ、木興町で右折し西へ。上空に広がるうろこ雲を見上げながら、木津川にかかる木興橋を渡ります。
朝屋で2車線の市道に出ると再び南へ。大型トラックなども通行するため、周囲に注意を払う必要がありそうです。道路脇にある大野木公民館には、大相撲の場所中になると、地元出身の千代の国関を応援するのぼりが掲げられています。
大内で右折し国道25号へ。もみがらを焼く煙が香るなか、通り過ぎる車が軒先のナンテンの実を揺らしていきます。花之木小の前から北西に折れ、ゆるやかな上り坂を法花方面へ。記者が走った1999年は、本来走る予定の国道(七本木方面)が工事のため通れず、約400m長く坂もある法花経由になっていました。
【通り沿いの軒先には赤いナンテンの実がたくさん】
工場の土手には、まだピンと伸びたススキの穂が、主のいない民家の軒先には、鈴なりの渋柿がありました。奥法花の集落入り口には「応感神社境内地」と記した鳥居と石の灯籠が立っています。気温が上がり、日差しを避けるように道路の山際を選んで歩き、出発から約2時間、白樫の岡八幡宮にたどり着きました。
境内の日陰のベンチでつかの間の休憩を取り、再び歩き始めました。走った当時は雪が降って手先もかじかむなか、月ヶ瀬への長い坂を上った記憶があります。奈良県に入り、オレンジのコスモスが揺れる花畑に迎えられ、正午ごろに奈良市月ヶ瀬石打へ入りました。信号のあるY字路を西へ曲がると、八幡神社の大きな石灯籠が迎えてくれます。
【石打の八幡神社は大きな石灯籠が目印】
石打からは長い上り坂。ようやく汗は引きましたが、足の疲れがじわじわと歩みを遅らせていくようです。梅の並木を上り切ると月ヶ瀬温泉があり、最後の下りに。マラソンのゴールは消防分署前の空き地で、長距離走が得意でなかった記者は、制限時間ぎりぎりに駆け込んだことを覚えています。
【月ヶ瀬地区の中心部・尾山に到着】
月ヶ瀬観光の拠点で、行政センター(旧村役場)などもある同市月ヶ瀬尾山が今回の目的地。出発から約3時間後の午後12時35分、ようやく尾山バス停に到着しました。復路に乗車する上野市駅行きの路線バスは同41分の発車で、十数年越しにまたも時間ぎりぎりになったことに苦笑してしまいました。
ほっとして小さな木のベンチに座り込むと、斜め向かいの柿の木の下で、年配の女性2人が井戸端会議に花を咲かせていました。ほどなく桃香野口発のバスが到着。当時、走った後はクラス別にバスで学校へ戻ったため、懐かしさもありました。
温泉からの下り坂は慎重に下りるも、徒歩で45分かかった県境まで9分で到達。途中で3人の客を乗せ、ポカポカ陽気のなかバスは走ります。往路の道中にも車窓からも、多くの実を付けた柿の木がたくさん見え、「実りの秋」を実感することができました。
約1万8300歩分の心地良い疲れを少しずつ実感し始めた午後1時すぎ、終点の上野市駅に到着。当時の記憶をたどりながら歩いた秋の半日、ほどよくかいた汗は心地良く乾いていきました。
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