夕陽背に 鉄路と歩く10km
伊賀地域の身近なウオーキングコースを紹介する「てくてく歩記」。JR関西本線・島ヶ原から柘植駅までの約26kmを元旦に歩いたコースの前編として、年始号では途中の佐那具駅までの道のりを紹介しました。今回は新堂駅を経て柘植駅に至る約10kmを歩きます。
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佐那具駅では、ちょうど加茂行きの列車が出発したところでした。ここまで約15kmを歩いたため、駅付近で小休憩。川と線路の間を東へ進み、民家が途切れたところで岩瀬橋を渡ります。太陽は早くも西に傾きかけ、川面をまぶしく照らしていました。
田んぼの間を線路端まで戻り、未舗装の道に入りました。アスファルトを歩き続けた足の裏は、土や草の柔らかい感触で少し休まったような気がします。長い直線区間 甲賀市方面へ向かう県道の高架をくぐり、農道から国道25号に出て、柏野の集落を抜けて再び農道へ。線路際ではないため、列車は少し遠くを走っていきました。民家が増え、右に折れると突き当たりに新堂駅が見えています。駅の待合室で足を休ませ、最後の一区間に備えました。
集落を抜けてふるさと会館いがの裏側へ出ると、そこからは北海道あたりかと錯覚するような直線区間。たこ揚げに出掛ける家族とすれ違い、北東に向かって少しずつ歩を進め始めました。しかし、真っすぐすぎるため、なかなか目的地が近付かない気がし始め、ここまで来て心が折れそうになってきました。
両足を鼓舞
田で羽を休めていたスズメの群れが一斉に飛び立ち、長く伸び始めた自分の影を見ながらひたすら歩きます。小杉方面への道が左に分かれると、線路沿いの細道へ。西日に照らされたススキを揺らすように列車が駆け抜けていきました。
帰りの列車は約30分後に出発予定。ちょうど間に合うころに着けるよう、まさに棒のようになりつつあった両足を鼓舞し、柘植駅を目指します。県道に出ると、横光公園では家族連れが連だこを揚げていました。駅手前の住宅地を過ぎ、木造の柘植駅舎が見えてきた時には、もう日は落ちかけていました。
暖房と寒風
柘植駅には午後4時25分に到着。歩数計は3万9227歩、歩行距離は25.9kmを指していました。島ヶ原までの切符を買い、出発までの10分間はひたすら足を休めます。草津線に乗り換える大勢の乗客を降ろした列車に20人ほど乗車し、定刻通りに発車しました。
歩いているとあれだけ長く感じた直線区間も、列車は約1分で走り抜け、ものの数分で新堂駅に到着。歩き続けて体温の上がった記者には、車内の暖房より空いたドアから吹き込む寒風のほうが心地良く感じられました。
辺りを紅色に染める夕日を目掛けるように列車は走り、7時間前にスタートした島ヶ原駅に戻ってきました。
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