地域誌「伊賀百筆」の27号が1年ぶりに発行された。今号は昨年亡くなった伊賀市出身の演出家、吉村芳之さん(享年70)と近代文学が専門の奈良女子大名誉教授、濱川勝彦さん(同84)の追悼特集を中心に、投句者を含めて185人が執筆した。【最新号を手にする伊賀百筆編集発行人の北出さん(右)と副編集長の福田和幸さん=伊賀市役所で】
数々のドラマや時代劇を手掛けた吉村さんの特集では演出作品の一覧表を掲載。長男の奈央樹さんやNHKで同僚だった元ディレクター、大河ドラマ「琉球の風」(1993)と「テンペスト」(11年)で時代考証を担当した琉球大名誉教授の高良倉吉さんら7人が思い出を綴った。
神戸市出身の濱川さんは県立上野高校に教員として赴任後、伊賀市内に居住。追悼では、高校や大学の教え子、30年以上続いた地元の読書会の会員ら14人が寄稿し、「先生」との別れを偲んだ。追悼特集の意義について編集発行人の北出楯夫さん(77)は「記録として残さないと存在が消えてはもったいない」と話した。
他には「藤堂藩伊賀者の系譜‐瀧家系図‐」と題した忍者関連の読み物や、大正期の作家、近松秋江(1876‐1944)が小説「黒髪」でモデルになった女性に送った書簡6通が伊賀市内で見つかった資料の紹介などもある。
発行部数は1000部で、A5判258ページ。定価は税込み1500円。原則は登録会員制だが、伊賀・名張市内の主要書店でも取り扱っている。
また、北出さんは自身の喜寿と郷土史研究に携わって60年の節目を記念した著書「伊賀の郷土史あれこれ」を発刊した=写真右。寄贈した市内の図書施設で閲覧できる他、同市上野東町の岡森書店本店と白鳳店(同市平野西町)で販売している。
A5判535ページ。60歳から77歳までの間にミニコミ紙や地元俳誌などで連載した計181編を選び、約1500項目の索引を付けた。定価は税込み3024円。
問い合わせは「伊賀百筆」が北出さん(0595・21・2145)、「伊賀の郷土史あれこれ」が岡森書店白鳳店(0595・23・8800)へ。